2006年3月アーカイブ


キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラ。彼は若き日に友人と2人で1台のバイクに乗り、南米を縦断旅行した。そこでの出来事、出会い、そして主人公の成長を描いた青春ロードムービーである。

チェ・ゲバラの働きやその人となりを知らなくても、本作は十分に楽しめる。しかし旅の途中、そこかしこで彼が何かを感じ、そして将来の闘争へ身を投じるにいたる伏線のようなものが感じられ、奥深い。

個人的には、全編ずっとバイクで走り続けてほしかったが、そこは実話に基づいているので仕方がない。


年老いたボクシングトレーナーのフランキーは、雑用係のエディとともにボクシングジムを営む。トレーラーハウスで育ち、家族の愛情を知らない少女マギーは、プロボクサーとして成功しようとフランキーの門を叩く。女性のトレーナーはやらないと突き放すフランキーだが、マギーの情熱に押し切られ、やがてボクシングを教え始める。そうして2人の快進撃が始まったが...。

事前の知識もなくサクセスストーリーと思い込んで見ていたため、後半の展開で物語に入りそびれてしまった。そのため比較的低い評価になってしまったが、あとから回想するとこれほどまでに美しい映画だったかと思ってしまう。次に見るときは涙ぼろぼろになる予感。

★★★★ 地獄の黙示録


ベトナム戦争末期、ウィラード大尉はカンボジアの奥地で自らの『王国』を築いているというカーツ大佐を暗殺する指令を受け、4人の部下とともにナング河を溯っていく。

前半は戦争の狂気を強烈な映像をもちいてこれでもかこれでもかとぶつけてくる。特に米軍ヘリがワーグナーを大音量で流しながらベトナム兵を虐殺するシーンが衝撃的。後半はうってかわり、まるで狂人の曇った精神の内面を描くかのようにスローダウンする。

何しろ長い作品なので集中力が途切れるとすこしつらいが、必見の映画のひとつ。

★★★☆ イノセンス


科学が発達し、人々が脳や体に機械を埋め込んで生活をしている近未来で、少女型ロボットが暴走し、所有者を殺傷するという事故が多発する。捜査する公安9課のメンバーも多くは電脳化をしており、自分は何者か、魂とは何かという自問を抱えている。

生命とは、自己とはというキャッチフレーズは美味しいが、本編を見ると実はたいしたメッセージ性もストーリーの深さもない。古今東西の哲学者の名言が繰り返されるので深読みをしようとすればできるが、あくまで借り物の深さでしかない。本作の魅力はそこではなく、圧倒的な映像の美しさと独特の響きを持つ音楽である。その映像はハイビジョンの大画面で見ると圧巻で、アニメという表現手法が到達できる極致にある。また前述の名言集を含めて独自の世界観を確立しているため、一部のファン達には中毒性があると思う。

★★★★ ハウルの動く城


帽子屋で働く18歳の娘ソフィーは、荒地の魔女に呪いをかけられ老婆に変えられてしまう。呪いの力でそれを人に告げられないソフィーは、町を後にするが、そこで魔法使いハウルの動く城に出会う。

絵、音楽の質の高さは宮崎駿作品の頂点ともいえ、それだけで感動を呼ぶ力がある。アニメ作品で登場人物それぞれの思いをこれほどまでに描きこめるものかとも感心させられる。戦争、人の善性、心の老いとテーマも深く、そのつもりで見ればメッセージも明確だ。

物静かなだけでちっとも魅力的ではなかったソフィーが、老婆に変えられるという試練を受け、ハウルと出会うことにより大切なものを知り、文字通り若返っていく。強い力を持ちながら心は子供のままであったハウルが、守るべきものを得て、成長をしていく。主軸となるストーリーはシンプルではあるが力強い。

しかし冒頭のアフレコは酷い出来で、作品として完成していない。ラストにも安直な無理やり感があり、なんだかとてももったいない。要素要素はすばらしい作品なのだが、全肯定できないのがさびしい。