新進の画家・青江(三船敏郎)と声楽家・美也子(山口淑子)が、偶然であった温泉地で雑誌記者に写真を撮られ、スキャンダル誌に掲載される。怒った青江は裁判に訴えることを決め、弁護士の蛭田(志村喬)に弁護を依頼するが...。
本作は、蛭田の姿を通して人間の弱さ、苦悶、再生を力強く描く。蛭田は仕事にあぶれ、結核をわずらう娘(桂木洋子)を抱えて生活が苦しく、酒におぼれる毎日を送っている。そして青江のスキャンダルを知り自ら弁護を申し出たにもかかわらず、雑誌社側に買収され、青江に不利な弁護を行ってしまう。
しかし青江はその弱さを見抜きつつ、蛭田の良心に賭ける。また娘は蛭田の不正を糾弾するが、青江の勝訴を信じながら息を引き取る。このあたりの美也子をも含めた人物描写はとても暖かく、ヒューマニズムにあふれて感動を禁じえない。
やがて裁判の結審。最後になって蛭田は自らの不正を暴く形で雑誌社側の有罪性を証明する。裁判を取材する記者たちに勝訴の感想を問われた青江は、裁判の勝敗云々より、蛭田の行為を評して『新しい星が生まれた』とのべ、感動を表明する。
現代の作品と比べるとシンプルなストーリーだが、名優たちの演技とゆるぎない演出は流石と思わされる。
ただ下世話な視聴者としては、青江と美也子の間にちょっと危ない関係、お互いに惹きあってしまうけれどかろうじて踏みとどまるみたいな演出があると楽しかったようにも思う。