2007年5月アーカイブ

★★★  醜聞


新進の画家・青江(三船敏郎)と声楽家・美也子(山口淑子)が、偶然であった温泉地で雑誌記者に写真を撮られ、スキャンダル誌に掲載される。怒った青江は裁判に訴えることを決め、弁護士の蛭田(志村喬)に弁護を依頼するが...。

本作は、蛭田の姿を通して人間の弱さ、苦悶、再生を力強く描く。蛭田は仕事にあぶれ、結核をわずらう娘(桂木洋子)を抱えて生活が苦しく、酒におぼれる毎日を送っている。そして青江のスキャンダルを知り自ら弁護を申し出たにもかかわらず、雑誌社側に買収され、青江に不利な弁護を行ってしまう。

しかし青江はその弱さを見抜きつつ、蛭田の良心に賭ける。また娘は蛭田の不正を糾弾するが、青江の勝訴を信じながら息を引き取る。このあたりの美也子をも含めた人物描写はとても暖かく、ヒューマニズムにあふれて感動を禁じえない。

やがて裁判の結審。最後になって蛭田は自らの不正を暴く形で雑誌社側の有罪性を証明する。裁判を取材する記者たちに勝訴の感想を問われた青江は、裁判の勝敗云々より、蛭田の行為を評して『新しい星が生まれた』とのべ、感動を表明する。

現代の作品と比べるとシンプルなストーリーだが、名優たちの演技とゆるぎない演出は流石と思わされる。

ただ下世話な視聴者としては、青江と美也子の間にちょっと危ない関係、お互いに惹きあってしまうけれどかろうじて踏みとどまるみたいな演出があると楽しかったようにも思う。

『スパイラル』上原ひろみ


最初に聞いたときリビングのBGMとしてはインパクトがないなと思ってしまったのだが、じっくりと聞くと鳥肌が立つほど惹き込まれる。近頃のイチオシである。


バトル・ロワイヤル法に基づき、中学生の1クラスを離島へ移して殺し合いをさせる。生き残れるのはただ一人。3日間が経過した後に複数の人間が生きていた場合、全員が死亡することになる。

衝撃的かつ現実離れをした舞台設定であり、実験的な映画である。よってその非倫理性を批判したり、またこの映画が現実社会の具体的な何かを告発するものであるという解釈は的外れになると思う。より恐ろしいのが、この映画から現実に対する考察(たとえば『生き延びる価値のある人間だけが生き延びられる』など)を導いてしまうこと。よってこの映画は十分な批判精神を備えていない未成年に見せることは危険である。

こうして現実から十分に隔離された舞台で深作欣也監督が描くのは、極限におかれた子供たちの個々の生き様と死に様である。四十余名の子供たちが殺し合い、一人一人が死んでいく姿を丁寧に描写する構成は脅威的だが、一つ一つは個人的、それゆえ具体的ではなく普遍的なシーンとなっている。

それゆえ、この映画は凡百の映画の名場面を集めたダイジェスト集のようなもので、物事の判る大人が見る分にはなんら危険でもないし、眉をひそめるほどのこともないと思う。(悪趣味だという批判は正当かもしれないが)

そうやって純粋に娯楽映画としてみると、実に面白い。全員とはいわないまでも十数名の登場人物が、みな準主役級の物語を演じて死んでいくというのは、役者にとっても視聴者にとっても実においしい映画なのだ。事実いくつもの名場面があり、それだけ強く印象に残る。

それにしても殺人という人間性否定の最大の題材を使い、一人一人を丁寧に描くというのはなんとも奇妙な手法である。この作品になにかもっと深い意味があるのかどうか、原作を読んでみたいと想う。


マイアミ警察で潜入捜査官として働く、ソニー・クロケットとリカルド・タブス。今回のミッションは、麻薬密売組織に潜入し、合衆国の捜査情報漏洩ルートを探るというもの。

アメリカの刑事物には珍しく(?)全編ハードボイルドで主人公達はいつも眉間に皺を寄せている。ディティールにこだわった画面とサスペンス感溢れる演出で飽きさせないが、見ていてだんだん疲れてくるのも事実。大衆迎合甚だしいハリウッドの大作映画にしてはある意味画期的ともいえる。

しかしストーリーは通り一遍で印象が薄く、あとから思い出すのも一苦労する。アクションシーンは派手だが、それだけでは作品としての魅力は低い。

大人気といわれる元のテレビシリーズを私は見たことがないが、テレビドラマの拡大スペシャル版といった雰囲気の作品である。

★★★  アフガン零年


アフガニスタンで暮らす少女。戦争で男の家族をすべて失い、祖母、母親と貧困の中で暮らす彼女は、生きていくため、仕事をするために男の子に扮装することになった。

本作の監督はアフガン出身で、復興アフガンの第一作としてタリバン時代を描いた。主演の少女もアフガン出身で、路上で物乞いによって生き延びてきた時代の当事者である。ストーリーや演出以前に、この事実が視聴者に重くのしかかり、同時に映画に力を与えている。

ラストシーンは唐突に訪れる。これは最後に少女が虹をくぐっていくという希望に満ちたシーンを用意していたのだが、主演の少女が当時を思い出して涙を止めることができないという現実を見て、希望を描くにはまだ早すぎるとしてカットをした結果という。

映画としての完成度や洗練度は決して高くはないが、見ておくべき映画の一本ではないかと思う。

少女クリクリと、その周りの愛すべき大人たちが町外れの沼地で繰り広げる心温まる物語。美しい自然と、個性的な登場人物たちの魅力を描ききり、心に残る名作となっている。

物語は老婆となったクリクリの回想として語られるが、劇中何度も現代に戻るような事はなく、集中は途切れない。そのかわりに役者達がそれぞれの役を魅力たっぷりに演じ、牧歌的でノスタルジックな雰囲気があふれる。ラストは悲しい事件で幕を閉じるが、それも含めてクリクリとしては懐かしくて胸がいっぱいになるような思い出なのだ。

★★★☆ 八月の狂詩曲


長崎に住む被爆体験をもつ老婆。ハワイから彼女の元に、実の兄弟だと名乗る手紙が届き、病床の自分に会いに来てほしいという。周りの者たちは会いに行けと言うが、老婆の心には原爆の傷がなお生々しく残り、やがてその心を蝕むのであった。

『なんだかおかしな夏でした。その夏休みには奇妙な出来事ばかり起こりました。』というナレーションで始まるこの映画は、夏休みに長崎のおばあちゃんの家に集まったいとこ達によって語られる。調子外れのオルガンで弾かれる『野ばら』の歌が象徴するように、夏休みらしい非日常的な雰囲気が全編に渡って染みとおっている。やがてその奇妙さは単に夏休みというだけでなく、被爆地長崎という舞台設定にもよるものだということが判ってくる。黒澤監督の作品の中では地味な扱いを受ける作品だが、随所に巨匠の円熟した表現がつぎ込まれ、見ごたえは十分である。

本作のメッセージはいつになく明確で、『反原爆』である。この老婆の心を子供達に伝えたいという思いがみずみずしい表現の中から伝わってくる。

原爆について、リチャードギアに謝罪の言葉を述べさせる場面がある。これは悲しいことだが実際には起こり得ないことであり、事実アメリカのマスコミには激しくバッシングされた。黒澤監督がこの事態を予測していたかどうかはわからないが、日本人にとって原爆を考える際には決して見落としてはいけない現実を、やや場外乱闘気味ではあるが見事に表現していると私は解釈している。(場外乱闘なので、純粋に映画表現として見るとすこし評価が下がる)

本作の圧巻は、ラストである。映画のテーマとリンクするのかどうかはわからないが、映像、音楽、演技、タイミングなどすべてを完璧に操り、映画表現が昇華する実例を見せてくれる。なんとも奇妙な映画である。

CCIE更新

CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)の更新試験を受けてきた。合格ラインは70でスコアは84。スコアはだいたいいつもこのくらいで、みっちり準備をしてもなかなかこの上に行かない。試験時間は余裕あり。わからない問題は考えても無駄なので、すぐに心の中でさいころを振る。

最初に認証を取得したのは1999年。2年に1度の更新なので、もう4回目か。実機をバリバリに使う部署ではないので準備をするのがなかなか大変だ。覚えていなくても良いがすぐに調べられる事柄というのは多いが、それを一つ一つ覚えなければいけない。ルーティングプロトコルのAdministrative Distanceとか、BGPの経路決定順位とか。

取得した当時にはなかったトピックとして、Wireless、Securityがある。これらは僕も実務ではほとんど触っていないが、問題としては易しい。意外と苦労するのがWAN、QoS、IP Multicast。

2年後にもネットワーク屋をやっているのだろうか。

掃除機の交換紙パック


これが例の最高級紙パック。もっとも安いタイプの5倍ちかい値段がする。とはいえ私の使い方では半年以上は持ちそうなので、ランニングコストで考えるとそれほど高くもない。でも次に紙パック買い換えるときはもっと安いのにするかも...。

実物を見てみると、予想に反して分厚くはない。この薄さにそれほどのナノテクが詰まっているといわれると、ふーんそうなんだという感じ。

掃除機を買う


アトピーの原因は布団のダニ(の死骸)では?という情報が多い。いまさらアトピーの原因になるかどうかは判らないが、布団に極めて多数のダニがいるということは事実らしいし、気分がわるい。

ちょうどまともな掃除機がほしかったので、日立の最上位機を買った。ダイソンのサイクロンも考えたが、音が非常にうるさい、使い勝手がいまいちという評判なので見送った。

この掃除機、特徴は微細なチリも逃さず取るということ。キーとなるのが交換式の紙パックで、スペアの価格はなんと3枚で2000円以上もする。この紙パック実は下位機種でも使えるので、冷静に考えるともっと安い掃除機でも良かったかもしれない。

最新の国産掃除機だけあって、使い勝手はさすがに良い。排気臭が少ないという売りだったが、普通に臭い。

【追記】購入後1ヶ月ほど、毎週2回くらい徹底して寝室と布団に掃除機がけをしたが、アトピーへの効果の程は不明。


2001年にニューヨークに行ったときに、Blue Noteへ連れて行ってもらった。そこがジャズの聖地とは知らないまま深夜のステージに感動し、土産に勘で買ったのがこのアルバム。タイトルどおり雰囲気が抜群で、週末の夜の定番となっている。


出だしから引き込まれるメロディー。ユーモアにあふれ思わず微笑みたくなるようなアレンジ。アーティスト達が楽しみながら音作りをしていることが伝わってくる、上原ひろみの魅力が120%詰まったお得なアルバムである。それにしても時間をコントロールしてしまおうなんて、たいした自信ではないか。