大学生のシンは、日本の退屈な日常から抜け出したくて、単身ニューヨークに渡った。だが向こう見ずなだけで語学にも疎いシンは黒人に荷物を脅し取られてしまい、無一文で食料の万引きを図る。そこで出会ったのがギャングのリーとタケダだった。
役の違いということもあるが、オダギリジョーが他の役者に喰われる映画というのは初めてみた。ジェイ・ウエストの演技のキレには神がかったものがある。カナダ出身でフランス人と日本人を両親に持つということだが、世界は広い。
3人はドラッグ入りのアイスクリームを売り、強盗を繰り返し、好き勝手に振舞う。極めてインモラルだが、見ていてゾクゾクさせられる。シンが何度かつぶやく『眠い国、日本』とは対極の世界がそこにある。
刹那的な享楽を求め、危険を省みず、もちろん法も犯してはばからない3人。こういった生活はたとえ映画の上でも続くはずがなく、やがて終わりを迎える。こういうタイプの映画はどうやって終えるかが大事だが、本作ではリーは刑務所に入れられ、タケダは警官に射殺される。シンはリーに必ず出してやると約束をして、日本に戻る。ニューヨークではリーに庇護される程度の存在だったシンだが、渋谷ではチーマーに絡まれても圧倒的な余裕がある。こののちシンが渋谷でニューヨークのときのように暴れまくるとも思えず、結局のところひとつの青春が泡のようにふくらみ、はじけたと見るのが妥当と思う。
ニューヨークにはリーの親友だったウォンがおり、3人が駆け抜けた舞台としてのニューヨークはもちろん残っている。難しいこともカタいこともいわず、3人の若者の肖像として楽しんで見るのがこの映画の正しい見方と思う。