★★★★ ラストサムライ


明治維新直後、西洋風の産業や軍を取り入れようと必死の日本政府の招きで、アメリカ南北戦争の英雄オルグレン大尉(トム・クルーズ)は日本にやってきた。自身が戦争に飽き飽きしており、ただ金の為だけに教練を施すオルグレンだったが、日本の尊王派の反乱軍に捕らえられ、首領の勝元と交流をするうちに侍の精神性に惹かれるようになる。

ハリウッドが日本を描いた大作と聞くと嫌な予感がするが、本作は考証という面でもとてもよくできている。日本の景色に似合わないシダ類が出てきたり、日本の侍はフルネームを名乗るべきところを勝元の姓が出てこなかったりと多少の突っ込みどころもあるし、町並みもすこし違和感があるが、日本人が無理なく没入できる程度には日本を描けている。武士道が過度に単純化と美化をされているような気もするが、ハリウッドがここまで他文化を描くようになったというのは驚く。もちろん日本人をちゃんと日本人の、しかも実力が確かな俳優が演じているのもポイントだろう。ただし渡辺謙はじめ日本人がみな英語ぺらぺらなのは大問題なので、字幕でなく日本語吹き替え盤で見るのが正しい。

また殺陣の質の高さは息を呑むほど。日本の時代劇もこれほどのアクションシーンを撮ってほしいものだ。

ストーリーは、天皇に取り入って近代化を推進しながら私腹を肥やす財閥と、ひたすら天皇に忠義を尽くし、結果として近代化に反対することになった武士の勢力の戦いを、アメリカ軍人の目でみるという形となっている。自身が戦争や金儲けに嫌気がさしているオルグレンは、侍の生き様と死に様の中に拠るべきものを見つけ、自らの行動をも侍の誇りで律するようになる。鎧兜を来たオルグレンにあまり違和感がなく、更には軍服に戻ったオルグレンまでもが侍に見えないのは、見事な演出だ。オルグレンと、彼が殺した侍の妻(小雪)との間に淡いロマンスがあるが、ぐっと表現を抑えてくれて助かった。ここで小雪が操を捨ててしまうと、売春婦国家の感がぬぐいきれなくなる。

本作で最も好感が持てたのが青年天皇の描き方だ。財閥にいいように操られそうになりながらも、自らの頭で真摯に考える姿は、明治の日本の姿そのものとかぶり瑞々しい。日本人としてよくぞこう描いてくれたと思わずにいられない。

武士道とは何か、と深く切り込んだ作品ではもちろんないが、ハリウッドが日本をきちんと描くことができるということを証明した点で画期的な作品である。