学生運動の高まる1960年台末。母親に捨てられ親戚の家で疎外感と共に暮らすみすず(宮崎あおい)は、母と共に去った兄が渡してくれたメモを手がかりにジャズ喫茶へ足を踏み入れる。そこには社会からあぶれた若者達が日々集まっていた。
三億円事件の実行犯が高校生の少女だったという物語で、もちろんフィクションとされているが、原作者が主人公と同じペンネームを使っていること、他に作品を発表していないことなどから実話なのではないか、そうだったら面白いという興味も手伝い話題性が高い。しかしこの映画の主題はそこではなく、まさに『初恋』そのものだった。
東大生の岸(小出恵介)に、社会と戦う為にはお前が必要なんだと言われ、はじめて居場所をみつけるみすず。それが三億円強奪の計画だとしても必死になって準備に励む姿は、本作で唯一生き生きと見えて切ない。あれほどの笑顔が素敵な宮崎あおいにほとんどにこりともさせない演出は徹底したものがある。本作では台詞がほとんどないが、そのぶん目だけで力のこもった演技をして見せてくれる。
ストーリーの展開はゆっくりで、他の役者の演技も押さえ気味。当時の時代の空気をしっかり描いてはいるが観ていてそれほど楽しいものでもなく、退屈に思う人もいると思う。しかしみすずへの感情移入ができた人は高い評価をつけられると思う。物語の終わり方があまりにも悲しくて、打ちのめされてしまった。
元ちとせの主題歌は、もうすこし普通に歌ってほしい。歌詞もメロディーもまずまずだし声も独特できれいなのだが、あの歌い方は引いてしまうものがある。