★★★☆ しゃべれどもしゃべれども

若くてさえない落語家の今昔亭三つ葉(国分太一)。落語が大好きなのだがなかなか思うように話せずに行き詰まっている。そこへ、密かに想いを寄せていた祖母の生徒から、小学生の甥の村林優(森永悠希)が関西弁のせいでいじめられているので落語を教えてくれないかと頼まれる。その奇妙な落語教室に、人とうまく話せないクリーニング屋のむすめ十河五月(香里奈)、野球解説の仕事から干されている元阪神タイガースの選手湯河原太一(松重豊)も加わって...。

この作品はなによりも題名がいい。題名だけで勝手に世界を膨らませていけるだけの力がある。脚本もシンプルだがわかりやすい。物語がシンプルなだけに配役が重要になるが、これ以上ないというくらいにはまっている。基本的に初々しく一所懸命なイメージだが、へこんだ顔も似合う国分太一、ぶっきらぼうが板に付いた超美人の香里奈、一見ダメそうだがある面で意外と力強い、というややこしい約にぴったりの松重豊、子役として驚くべき演技を見せた森永悠希。国分以外はいわゆる人気俳優でないが、見事なキャスティングというほかない。

この映画を引き締めているのが終盤で国分太一が見せた落語の一席。よほど稽古をしたのかかなり上手に面白い噺を披露し、リアリティを高めている。

ただすこし残念だったのがストーリーの弱さ。これは三つ葉をはじめとする4人の再生の物語だとおもうのだが、三つ葉は酒の勢いを借りながらも素晴らしい噺を披露し、優も同級生の前で一席演じて面目躍如となったが、のこり二人の再生が弱い気がする。湯河原は二軍の監督に就任するという説明でたしかに再生しているはずなのだがアピールが弱い。五月に至っては、三つ葉と恋仲におちて笑顔をみせるというだけでは何ともまあ、再生と呼ぶのははばかられるなぁ。