予定外に快適なホテルで一夜を過ごし、TGVでアヴィニヨンへ。フランスの鉄道網はパリを中心に放射状に整備されていて、主要TGV路線はとても便利に移動ができるのだ。1時間未満の移動でアヴィニヨンに到着したが、列車のたびは2時間くらい乗らないと落ち着かないなぁ。
夜明け前、車窓から外の明かりや風景がまったく見えない。トンネルの中というわけでもないしなぜだろうと思っていたら、霧が深くたちこめていたようで、明るくなってきても乳白色の霧が見えるだけで司会がほとんどない。アヴィニヨンに着いても霧ははれない。TGV駅からサントル駅行きのバスに乗り、町へ向かう。
アヴィニヨン・サントル駅は町の門の目の前。オランジュへの列車を調べて、12時過ぎの切符を買った。まだ朝は早いが、霧でかすんだ門をくぐって町へ入る。アヴィニヨンは周囲を中世の城壁に囲まれた町で、法王庁宮殿と、途中までしか残っていないサンベネゼ橋(通称アヴィニヨン橋)がある。カフェでお茶を飲んでいた人が、法王庁宮殿はあっちだと指をさして教えてくれた。まだホテルを探すには早すぎるので、荷物を一式背負ったまままちを突っ切る。門からの道をまっすぐ歩いて市庁舎の前を過ぎると、大きくて無骨な建物の前にでる。これが1309年から68年間、ローマに代わってカトリックの最高指導者が住んだ場所だ。
時刻はまだ9時前。9時30分の開館までには時間があるのでロシェ・デ・ドン公園で時間をつぶす。この公園はローヌ川に面した高台の上にあり、晴れていればアヴィニヨン橋が見えるとのことだが、真っ白で何も見えない。時々軽い雨がぱらついたりして、あまり良い心持ちではない。朝食がわりにサンドイッチを作って食べる。9時になってノートルダム・デ・ドン大聖堂の鐘がなる。大聖堂は外見はコンパクトだが、中に入ると思いがけずカラフルな装飾に目を奪われる。フランスの教会堂は派手好みなのかもしれない。
9時30分をまわり、法王庁宮殿に入る。法王庁宮殿は内装はほとんど残っておらず、建物の中はがらんどうなのであまり見るものはない。ただ音声ガイドが工夫してあって、各部屋の用途や当時の様子の描写などが結構詳しく説明されるので、想像力が刺激されて意外と楽しい。日本語音声ガイドはとても助かる。あまり時間はないので、端折り気味に見学した。
法王庁宮殿を出て、次にアヴィニヨン橋に行く。童謡で有名と言うが、音声ガイドから流れる曲は確かに聴いたことがある。この橋はローヌ川にかかる現存する橋では最古のもので、サン・ベネゼが神の啓示を受けて作ったものとのことだが、来歴を聞かなければ何の変哲もない橋に見える。この橋は途中から先が流されていて、対岸には届いていない。つまり橋としては役に立っていない。そんなに大切な橋なら再建すればいいのにとも思うが、あえて再建せずそのまま保存したことで観光地として成立したのかもしれない。
さて、少し急ぎ足で駅の近くに戻り、ホテルを探す。ガイドブックに載っていたホテルは閉まっていたが、その斜め向かいのホテルが空いていた。トイレ共用、シャワー付の部屋で37ユーロ。十分に快適だ。ロビーに書棚があり、日本語で『本を持っていかないで』と書いてあったが、そんな人がいるのかなぁ。荷物を置いて、すぐ駅に向かう。
約15分の移動でオランジュの駅に着く。オランジュは静かな町で、駅から旧市外までは1kmほどの道を歩く。午前中に市場が出ていたらしく、町の人が道沿いで片づけをしている。そろそろ旧市外かなと思い左側を見ると、建物の間に巨大な壁があるのを見つけた。
近寄ってみるとまさしくローマ劇場。一年前にローマで見たのと同じような石造りの古い建物だ。ここでも日本語音声ガイドが用意されている。今度は時間がたっぷりあるので、ゆっくりと見学する。ローマ時代、帝国の各地に作られたローマ式劇場だが、オランジュの古代劇場はもっとも保存状態のよいもののひとつ。半径50メートルくらいの半円形の客席に面する舞台は、高さ30メートルにおよぶ舞台壁をもつ。舞台壁には役者の出入り口のほか装飾を収めるための壁眼などがまま残っていて、観客席を見下ろす位置に皇帝の白像が置かれている。暑い日には舞台壁から観客席の上までを覆う日よけの布をわたしたというからスケールが大きい。
ときおり雨がぱらつくので傘をさして見学する。フランスではこの手の劇場跡などは今でも芝居やコンサートに活用していて、観客席はきれい整備されているが、雰囲気が変わらないように最小限の補修にとどめてある。こんな劇場で、星空のしたで芝居を見たらいったいどんなだろう。
帰りの時間をにらみながら、凱旋門へ歩いたが、こちらは修復中で前面を布で覆われていた。市立博物館は特に見るべきものはなかった。寒さと疲れで少々ぐったりしながらアヴィニョンへ戻る。明日はポン・デュ・ガールの水道橋を見てからマルセイユへ行こうかと思っていたのだが、やはり列車の時間が合わなくてあきらめる。いったんホテルに戻り、一休みしてからもう一度よるのを歩こうかと考えたが、実際ホテルに戻って一息つくともう面倒になり、手持ちのりんごやチーズで腹を満たして寝てしまった。18時くらいから翌朝までぐっすりと寝られた。
