某誌で某社の社長が(記憶力が...)言っていて面白かったのが、ひとりカラオケのアイディアだ。ひとりでカラオケに入って歌いたいという人は潜在的にたくさんいた。だけど恥ずかしいし従来のカラオケ店はひとりで楽しめる空間として作られていなかった。そのニーズを発見してひとりカラオケというメニューを作ったところ、たくさんのお客さんが来たという
これは実に示唆に富む話だとおもってメモを残していたのだが、社長が実際に何を言ったのか忘れてしまった(記憶力が...)。ここではこの話を元に思うことを書いてみたい。元記事の上塗りになるかもしれないし、ぜんぜん別のことになるかもしれない。
商売の基本は顧客のニーズを汲み取ることだ。これは今も昔も、そして将来も変わらない。これまでのやり方は、様々なニーズのなかから最大公約数を満たしうる製品やサービスを設計し、規模の経済をつかって安価かつ大量に提供することによって成長を目指すというものだった。
ところが衣食足りた人たちは、次第にわがままになっていく。三流の(世間的には一流の)アイドルグループがオンリーワンを歌い上げ、何が本当に上質かわからない人たちは(僕もだが)人と違うということに価値を見出していくようになる。そこでターゲットマーケティングやブランド戦略が導入され、素因数分解のサービスを設計する。そうしてちょっと他とは違うことを主張する製品たちが、ちょっと人とは違う自分になりたい人たちをひきつける。ちょうどインターネットで市場がフラット化したので、製造業に関しては多品種少量生産の機運が更に高まっている。サービス業もネット検索で潜在的な商圏が拡大したので、個性的なサービスを提供しやすくなった。
ひとりカラオケのアイディアもそういったニッチなニーズの汲み出しという観点からすると特別あたらしいことではない。いいところに目をつけたねというだけである。だけど僕はこの記事によって、それ以上に心を動かされた。なぜだろうか。
それは多分、このサービスが弱者(といっては言いすぎか)に手を差し伸べるものだからだと思う。みんなといつもわいわい楽しめる人はそれでいい。そういうお客さんのほうが人数も多いしたくさん飲み食いするので商売上ありがたい。だけどひとりで静かに歌いたい人もいる。そういうニーズはこれまで掘り起こされなかったか、あるいは無視されていた。
こういう弱者のニーズに気づくのは、本社のエリート企画部門ではないだろう。現場の社員が(僕の好きな表現では、まさに顧客価値を創っている張本人たちが)顧客満足というものを真剣に考えたときに、はじめてアンテナに引っかかってくるか細い声なのだろう。これをできる会社とできない会社では、結果としてのサービス充実という以上に大きな差があるはずだ。
この社長は他にも面白いことを言っていた気がする。詳細は忘れてしまったが(記憶力が...)、いかに組織を活性化するかという工夫の話だったように思う。そういう企業が、社会の中でも比較的弱い声を吸い上げて実現をしていく。その見返りとして企業は成長を遂げる。これは経営のひとつの理想系なのではないかと僕には思えた。
社会的成功者の言葉はときとして美辞麗句で飾られて胸焼けがするが、地に足が着いた先人の言葉は実に示唆に富んでいて考えさせられる。書いてあることに関心させられるだけでは多分本物ではなくて、いろんなことを想起させるのが本当の人物というものだろう。
