名刺シリーズ第二段。こんどは裏面の話をしよう。たいていの名刺は裏面は白。会社によっては英文の名刺が刷ってある。どちらも情報としての価値はゼロだし、渡すほうも受け取るほうもそんな価値は期待していない。だったらそこに価値をつければ、ライバルの一歩先を行くことができるのではないだろうか。
前回も書いたが、名刺は初対面の相手に自分の何たるかを伝えてくれる大切なツールだ。先入観なしに無条件で読んでもらえる最初で最後のメッセージかもしれない。そのため前回は笑顔の写真を載せようと書いた。今回は同じ発想でもう少し先に進んでみたい。
初対面の人に伝えたいメッセージとは何だろう。職種によっても違うだろうが、まずは仕事面で何ができるか、何が得意かということは必須情報だ。部署名に『金融営業部』などと書いてあればなんとなくわかるが、『第三営業本部』などといわれるとさっぱりわからない。だいたい社交辞令で『どんなことをされているんですか』と聞いてもらえるので簡単に説明するが、多分覚えてはもらえないし、あまり時間をかけるわけにも行かない。そんなときに裏面に部署の業務内容やミッション、スローガンをかいてあればなるほどと思ってもらえるかもしれない。
もっと重要なのがパーソナルな情報だ。自分が得意なこと、興味を持っていること、モットーなどを恥ずかしがらずに書けば、相手はそれだけ自分に対して明確なイメージをもってくれる。気障で誇張的なことを書けば逆効果だが、相手とどんな関係を作りたいかを意識して考えれば、何を書けばいいかわかってくるだろう。(相手に合わせて数種類つくったほうがいいかもしれない)
エンジニアであればこの種の情報は特に重要だ。今回提案や受注した分野については出来ることはわかっているが、それ以外にどんなことが出来るかというのはお客様からすれば関心事項だ。軽く相談したときに快く対応してくれるか、広い視点で技術を捉えているかというのは技術者の価値を大きく左右(上下?)する。それに案件を成功させた後にヘッドハンティングしてくれるかもしれない!?
場合によってはプライベートな情報(とはいっても公にネタにできるパブリックな情報)もいいかもしれない。釣り好き同士で話が合ったり、ワイン談義でかわいがってもらったりというのは営業職にとっては願ったり叶ったりだ。そのきっかけは多いに越したことはない。
ここまでが初回挨拶ツールとしての名刺活用。これだけでも十分有効だと思うが、ここでもう一歩すすめてコミュニケーションツールとして使えないだろうか。どんなに工夫をした名刺でも、交換をされたあとの運命は悲しいものであろう。ファイリングをしてくれるお客様は例外的な神様のようなもので、たいていは名刺箱に詰めこまれるか、必要情報をPCに取り込まれた後にシュレッダ行きか。場合によってはその日の夜にゴミ箱行きということもあるかもしれない。
だったら捨てないでおく価値のある名刺、もしくは定期的に受け取ってもらえる価値のある名刺を考えたらどうだろう。たとえば月間カレンダー。普通のカレンダーなら価値はないが、特定の業界に関してイベント情報を詰め込んだカレンダーであればどうだろう。画鋲で目の前のパーティションに張っておいてもらえるのではないか。毎月会って来月版を受け取ってもらえるようになるのではないか。
カレンダーとは陳腐なアイディアだし効果も限定的かもしれない。だけどそれぞれが頭をひねって考え、毎月数時間程度の労力をかけて意味のある紙面を作ることができれば、それを受け取って一時間程度雑談をしてくれるお客様はけっこういると思う。技術者であれば事例をイメージ図とポイントだけシンプルに書いて渡す。別に雑談をする必要はない。興味があったら表面のメールアドレスを見て連絡してくれるだろう。
この手の瓦版をリーフレットとして作っている会社は少なくはないだろう。それなりに効果をあげているところもあれば、さっぱりというところもある。ノウハウなどはやっぱり必要で、作れば即効果がでるというものではない。このアイディアの肝はあくまで名刺という点。紙面を作るのにそれほど手間はかからないし、受け取るほうも面倒さがない。半分冗談で付き合ってくれる確率が高いのではなかろうか。
ついでに裏面英文について一言。僕の名刺も裏面は英文名刺になっている。ちょっと国際ビジネスマンっぽくて(実際にはまったくそんなことはない)気分がいいが、はたしてそうなのだろうか。よく考えると、本当に英文の名刺が必要な人なら英文専用の名刺をもつべきではないのかと思い至る。いくら便利だからといって裏面は裏面、渡す相手に失礼であろう。両方表面だなどという言い訳をする機会は多分与えられない。
たかが名刺、されど名刺。ベンチャー企業の名刺などをもらうといろいろな工夫がしてあって実に面白い。普通の会社員は名刺のデザインそのものには手を加えられないだろうが、プラスアルファの工夫はあってしかるべきだと思う。最前線で仕事をしているのは自分自身なのだから。
