空飛ぶスパゲッティモンスター教

宗教書というものを初めて買い、空飛ぶスパゲッティモンスター教に入信した。なんでそんな怪しげな宗教にと心配をされてしまうかもしれないが、クーリングオフ規定があるから大丈夫。『30日お試しください。もしお気に召さなければ、かならず元の神のもとにお返しします』との規定が正式な教義としてあるのだ。入信には一切の儀式や手続きを必要とせず、空飛ぶスパゲッティモンスター信(以降スパモン)をただ信じるだけでよい。脱退もまた然り。

主要な教義や論点はWikipediaや聖典を参照されればよくわかると思うが、一信者としてはどのような宗教生活を送り、それによっていかに良く生きるかが大切である。教義によれば、『金曜日は宗教的祝日』、『ハロウィーンを祝う』、『毎年9月19は国際海賊のように話す日』とのことである。金曜日はなるべく在宅勤務をするようにしよう。ハロウィーンについては、クリスマスを祝う習慣(と理由)がもともとないので、代わりに盛大に祝うこととしよう。9/19にどうすればいいのかよくわからないが、とりあえず覚えていたら夕食に海賊っぽいパスタを食べよう。

もっとも重要な教義として、『一切のドグマを拒否する』というものがある。スパモンの存在すらも、それを否定する適切な証拠が示されればそれを受け入れる、ということである。だからといって非存在が証明されないから存在するに違いない、というドグマも受け入れない。(悪魔の証明だし)つまり自分が何を信じて何を信じないかは、自分で判断して選ぶということである。これは本当に大事な事だと思うのだが、多くの宗教信者(あ、今は僕もそうか)は疑わずに信じることこそが大切と教えられ、そのようにふるまっている。(なぜそのようなことが起こりうるのかはリチャード・ドーキンスの『神は妄想である』か、スーザン・ブラックモアの『ミームマシンとしての私』で詳細に論じられている)

FSMの天国は、ビール火山とストリッパー工場のある楽園である。このくらいの天国であれば現世を楽しむのとたいして変わりがないので、宗教的な功徳を積むために何か特別な犠牲を払う必要はなかろう。ちなみに地獄もあまり様子は変わらないが、ビールの気が抜けておりストリッパーは性病もちとのこと。既存の宗教の多くが苦しい現世からの逃避や、極端に恐ろしく描かれた地獄への恐怖心を宗教的求心力として利用してきたことに比べると、実に穏当なことである。ただし毎日ビールだけではちょっと退屈。これが永久に続くのだとすれば、できれば天国にも地獄にも行きたくない。

個人的にFSM教の教義におけるもっとも重要な点は、『創造主であるスパモンはあまり頭がよくなく』、『被造物である人間を愛してはいないし、実際ほとんど見ていない』ということである。これは世の名で起こっているありとあらゆる事件や矛盾について、これ以上はないというほど的確な宗教的説明だ。スパモンはありとあらゆるものを創造したが、じつはあまり深くは考えていない。気まぐれで偶発的な事象を起こすこともあるが、深い意図はない。時として人に乗り越えがたい苦難を与えるが、別に信仰を試しているわけではない。人間がスパモンを信じ、愛することも期待していないし、そもそもほとんど関心はない。神の恵みを与えることもないが神罰もない。 そもそも御姿に似せて作られた神聖なものはパスタであって、人間などではないのだ。

このようにさまざまな画期的な側面を持つFSM教だが、個人的にいくつか納得のいかない点がある。それについては後日(12/24あたり?)に書くことにしよう。